その淫猥な…情事の名残のような情景に、芹霞の顔が沸騰して。
「変態ッ!!!」
真っ赤な顔をして顔を背けてしまったけれど。
「……ありがとう」
か細い声が聞こえた。
「煌の変態ぶりに、櫂のこと少し和らいだ」
また"変態"かよ。
ちくしょう。
「ああそう、少しかよ……じゃあ…」
「ちょ…ま、まさか!!! それ以上のことをすれば忘れられるなんて短絡的に考えてないでしょうね!!?」
「そのまさかだったりして」
「ギブギブッ!!! 本当にあたしもうギブッ!!!」
凄い怯えた目になってしまったから、俺は笑って自分を抑えた。
余裕ぶったけど、凄い必死。
抑えても抑えても、芹霞を押し倒したい情欲が膨れて。
心の中で緋狭姉思い浮かべて、煩悩を恐怖に塗り替える努力をする。
そんな男の事情というものが判らねえ芹霞は、
「……はあ。不良息子持った気分だわ……」
そう暢気に嘆いていた。
息子なら、母親に手を出さねえよ。
そう睨んでみたけれど。
だけど見るからに辛そうだった芹霞の表情が、少しだけ和らいでいるのをみて――
俺は少しだけほっとした。
俺は馬鹿だから。
泣いて苦しんでいる女に慰めの言葉なんて思いつかねえ。
もし玲ならば、気の利いた台詞で優しく包んで癒せるんだろうけれど、そんな器用な芸当俺には出来ねえ。
俺にあるのは、この身1つ。
それならば。
例え"変態"って罵られようと、俺なりの方法をとるしかなくて。
例え少しだけとはいえ、理性の解放なんて、今の俺にとっては危険な賭け。
――だけど……。
こんな方法しか思いつかねえ俺を
許してくれと――
心で芹霞に切に願った。