「は!?」


驚いた声を上げたのは、俺と玲で。


「美男美女って羨ましいよね。あたしも綺麗に生まれたかったよ。これでも一応、緋狭姉の妹なのにさ~」


こいつは、何を言っている?


俺は芹霞を眺める。


肌理細やかな白い肌をした華奢な身体。


肩より少し長くなった黒髪。


生命力溢れる黒目勝ちの大きな目は、誰もを惹きつけて。


緋狭さんのような艶やかさはないけれど、確かに血を引き継いだ颯爽とした美しさ。


年々綺麗になりゆく芹霞を見て、何度不安を覚えたことか。


決して媚びることのない凛とした美しさに、群がる男が数知れず。


彼女の自覚ないことをいいことに、何度も俺は影で蹴散らした。


その純白の羽根を汚さぬよう、俺は大事に護ってきているというのに。


「…………はあ」


盛大な溜息をついたのは煌で。


「何で俺ばっか、違うんだろ」


橙色は澱み始める。


「桜だって男装すりゃ見れる顔だし。俺だけじゃん、酷えの」


誰もが顔を見合わせた。


「……無自覚って怖いよね」


「あ?芹霞に言われたくねえよ」


無自覚同士が、互いを哀れむように溜息をついた。