力は精神力だ。


力を使い続けるのは、それだけに精神に負担をかけ、体力を蝕み始める。


体力が取り柄の俺なのに、慣れぬ力の行使で、次第に身体が大きく傾き、蹌踉(よろ)けてきてしまった。


凄く息が上がってくるけど、隣の玲は平然としている。


悔しいけど、今の俺の体力は限界かも知れねえ。


「……芹霞をこれだけ結界に入れて居たら、まずは大丈夫だろう。煌、後は僕に任せてもう休め。元々お前の解毒もまだ完璧じゃないんだろうし。

……桜、気分はどうだい?」


どうやら、玲は桜にも"回復"措置をとっていたらしい。


こんなしんどいこと、同時進行で平然とするなよ。


「ありがとうございます、桜はもう治りました。私は少し起きていますので、どうぞ玲様、お休み下さい」


絶対、嘘だ。


桜は完治なんかしてねえ。


判っているのに、そう言い出せなかったのは、


「休んで……明日、よろしくお願いします」


そう、神妙に頭を下げたから。


櫂の異変に向き合えと、宣告した桜の目には大きなクマが出来ていて。


それが事態の大きさを、否応にも実感させる。


ここまで無理をして、桜が伝えたかった櫂の異変というものの全貌は、きっと明日判るのだろう。


「葉山、ボクが起きているから、君は休みなよ」


そんな桜を心配そうに見つめる遠坂の目にも、更に大きいクマ。


あっちもこっちも病人続出だ。


そう思った時、玲がすっと身体を動かして。


何と。


桜と遠坂を、手刀で強制的に眠らせてしまった。


「ここまでしないと休まない奴らだからね」


そう哀しげに笑う玲。


そして俺達は、桜と遠坂を、部屋の外に控えていた荏原の案内で、個室に連れた。