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桜と共に、突如現れた芹霞は、俺の荒んだ姿に吃驚したらしく。


「櫂、どうしちゃったの!!?」


大きい目を更に大きくさせて俺の元に駆け寄った。


俺の元に――。


「櫂!!?」


それが本当に嬉しくて。


ずっとずっと不変なこの関係に。


変えたくて仕方が無い、昔から続くこの関係に。


今、少しだけ感謝した。


俺を裏切らない存在を抱き締めて、俺の精神はようやく安定する。


落ち着けば、ふて腐れた煌が頬を摩っていて。


「お前さあ、手加減しろよ。

口ん中、切っちまったじゃねえか」


被害にあったのは煌だけだったらしく。


「本当に俺の周りってえげつねえ奴らばっかで、俺って損な役回りじゃね?」


そんなぼやきは聴かなかったことにして。


暫くすると玲が入ってきた。


一瞬、身を硬くした芹霞に俺は訝ったが、


「まったく。折角手当てしたのに、傷口開いちゃったじゃないか」


微笑みながら、それでもぶつぶつ文句を言ってくるいつもの玲に、芹霞が僅かに安堵の吐息を発するのを俺は聞き逃さなかった。


俺に寄り添い、包帯を取り替える玲は。


どこからみても女の姿にしか見えず。


だからといって意識しているわけではないけれど、いつもとは違う光景に、俺でさえ少々目を細めた。


「……お似合いだね、櫂と玲くん……」


ベッドの縁で両肘をついて眺めていた芹霞が、ぼそりと言った。