そんな時、くすりと笑う須臾の顔。
勝ち誇ったような、哀れむようなそんな顔。
――ありがとう。
櫂を手に入れるとの宣言通り、
本当に手に入れたというの?
そんな簡単に――
櫂が手に入ったというの?
「ねえ、櫂……証明しましょう?」
目の前で、須臾が背伸びをして櫂にキスをせがんだ。
"櫂"
呼び捨てに出来る女は、あたしだけだったのに。
櫂は少し照れたように苦笑しながらも
「!!!」
それに応えて――
深い口づけを交わしあう。
美貌の幼馴染は。
今までに見たことがないくらいの色気と、"男"を見せつけながら、獰猛なくらいに須臾という女を求めていた。
櫂は、須臾を好きなんだ。
こんな顔をするくらい、好きなんだ。
あたしは、こんな櫂を知らない。
あたしの目の前で、
櫂はあたしの見知らぬ櫂になって行く。

