本音を言えば、あたしだって一応うら若きオトメだし、醜い傷の様など玲くんに見せたくはない。


それなのに、玲くんの優しさに甘えて、縫合までさせるなんて、あたしは何て罪作りなんだろう。


「暫く、玲くんに頭あがんないや……」


そう呟いた時ドアが開いて、由香ちゃんが小走りで入ってきた。


「おお、神崎!!! 身体は大丈夫かい!!?」


いつも通り元気な声を出す由香ちゃんだけど、頭がぼさぼさだ。

更に顔が酷くやつれていることを指摘すると、彼女は空笑いをした。


「葉山のくれた宿題がこの上なく難解でね。だけど帰ってきた師匠が…葉山と一緒にボクにも"強制睡眠"を施してくれたおかげで、これでもかなり回復したんだよ。ちょっと前に目覚めた処」


桜ちゃんの"宿題"って何だろう。


由香ちゃん、本当に参っているような表情だ。


「あ、そうだ。神崎の洋服は、用意されていたものにボクが勝手に着替えさせてしまったけど、それで良かったのかな?」


「ああ、由香ちゃんだったのか、ありがとう。何だか目覚める度に服が違うから、誰が着替えさせたんだろうと気になってたんだ」


少しだけほっとする。


「それから。師匠がね、もし神崎が身体洗いたいなら、シャワーくらいは良いって。一応バスタオルとか持ってきたけれど?」


「あ……じゃあちょっと浴びようかな?」


身体を洗えるのが嬉しい。


「判った。異変感じたら、師匠がすぐ言えって。良かったね、師匠の力が戻ってて。更に更に。如月と師匠が此処で仲良くおてて繋いでいたら、神崎の調子がそこまで回復したんだぞ」


「え…煌と玲くんがおてて繋いで…?」


何だか……想像出来ない図式だ。


「突然如月が腕環がどうとか騒ぎ出してさ、見るからに異様な光景だったよ。……ま、紫堂の異様さには敵わないけど」