あひるの仔に天使の羽根を


「どうして?」


私は困惑していた。

同時に。

警戒していた。


罠かもしれない、と。



「……あの方の指示だ。私の意向ではない」


「あの方?」


「それに答える義務はない」


そう忌々しげに吐き捨てた女の口調で、私は大丈夫だと確信した。


「お前に1つ言っておく」


背にした扉が閉まる直前、女の言葉が響いた。


「お前は登録されていない。

だから――左へは進むな」


そして閉まるドア。


意味は判らなかったけれど。


通路は酷い静寂が漂っていて、まるでトンネルのように。


やがて扉が2つある場所に行き着くと、私はそこに死臭の匂いを感じ取った。


女が言った――左のドアから。


機械の無機質な声が聞こえる。


女ならば、左の扉を進むようにと。


その奥からは死臭と……歓声のような喧騒。


この奥で一体何が行われているのだろう。


時間があれば確かめてみたい気もしたけれど、今は少しでも早く芹霞さんを見つけねばいけないから。


私は右の扉に進んだ。


途中で、何人かの黒い色の神父に出会ったけれど、私の相手ではなく。


手足を止めることなく、横を通り過ぎれば男達は倒れる。