込み上げる嘔吐感。

心身を乱したあたしは、途端にうまく呼吸が出来なくなり、必要以上に酸素を使い果たして、ばたばたもがいた。


苦しい。


息が出来ない。



酸素不足で苦しみ始めたあたしに、


櫂は形の良い顎を傾け、あたしの唇から自分の酸素を送った。


そんなことをしたら、櫂の呼吸が出来なくなってしまう。


あたしはどんどんと櫂の胸を叩いて抗したけれど、


櫂は笑いながら首を静かに横に振る。


温かいのか、冷たいのか判らない、櫂の唇。


櫂はあたしの後頭部を両手で押さえて、酸素を送り続ける。


そんなことをしたら櫂が――。


あたしの涙は海に消え。


目の前の櫂が闇色に霞んでいく。