あひるの仔に天使の羽根を

 
「え!?」


「早く!!! "生き神様"に祈りを!!!」



カラーン。


見れば通行人は既に、イクミと同じようにしていて。


それは、大名行列のような物々しさで。


緊張感漂う空気に呑まれ、あたし達も道脇に移動したけれど、それでも状況が釈然とせず顔を見合わせたままで。



こつん、こつん。


遠くから何かが近づいてくる音がした。


それはあたしの心臓を縮み上がらせるには十分な、不気味な足音で。




カラーン。



こつん、こつん。



その音が近づくにつれ、あたしの背筋に震えが走る。


どくどくどく……。


陽斗が、警戒しろと叫んでいる。



カラーン。



「何だ……?」


煌が目を細めて、まだ小さくにしか見えない朧な輪郭を見つめる。



カラーン。



その時、


道脇から、子供が飛び出してきて。


そしてそれを追いかけて母親らしき女性も出てきて。



こつん、こつん。



カラーン。



それは――


現れた。



それは全身黒づくめで、深い漆黒色のフードを被っていて。


手にしているのは大きな鎌。


死神、そのものの姿で。