あひるの仔に天使の羽根を


「とにかくさ!!!」


煌があたしと玲くんを凄い勢いで引き離し、声を荒げて続ける。


「そこに居た化け物が、男食ってたんだよ!!!」


「食ってた?」


「そう。食い散らかされた死体ゴロゴロ。てらてらした黒い気味悪い化け物の下には、今まさに食事されましたというような死体があってさ、背中の烙印の色の感じ見てれば、生きたまま食われてたのかも知れねえ。死斑はなかったし」


「背中の……烙印?」


玲くんが鋭い目をして聞き返す。


「ああ、そうだけど?」


「英語……だった? 烙印に文字は?」


「あ!? "bub"は読めたけど……」


すると玲くんは舌打ちをして俯いた。


「どうしたの、玲くん」


「ちょっとした顔見知りだったから……」


凄く傷ついた顔をしている。


「こんなことになるなら、追いかけて救ってやればよかった……」


そして大きな溜息をつきながら空を見上げ、煌に顔を合わせた時だった。


カラーン。


鐘の音が聞こえたのは。


「何の音だ?」


煌が怪訝な顔をした時、



カラーン。


「"生き神様"に祈りを捧げて下さい!!!」


突然少女が声を上げて、道脇に座り込んで土下座を始めた。