尾鰭(おひれ)のように、先が窄(すぼ)まった肉の先端。
上部に見えるは、中央が陥没した、爛れた肌を持つ肉塊。
それが更に大きな血色の肉の塊に直結していて。
傷のような大きな裂け目からは、体内が剥き出しになっている。
そこから覗く腸や臓器らしきものは、
これが"生きて"いることを物語る証なのか。
背筋に上るこの戦慄は。
悍(おぞま)しい。
それ以外に形容がない。
しかもその数は、両手の指以上にのぼるもので、まるで見廻りのように漂っている。
こっちに来る――!!!
あたしはパニックになって、櫂の胸を叩いた。
櫂は怪訝な顔をして、あたしの指差す方向を見つめ、身体を強ばらせた。
そして岩間を見つけた櫂は、素早くあたしと共に影に身を隠す。
幸いにもソレには気づかれなかったようで、あたし達のすれすれを泳いでいく。
白いものが視界に切り込んだ。
あたしは眼を細める。
肉塊をあえて人型に例えるならば。
俯せ状態で泳ぐソレの背中にある白い異物。
――羽根!!?
悍しい体躯に、1枚の白い片翼が器用に蠢(うごめ)く。
ああ、混沌とした――
何という存在!!

