だけど、君にとって特別なのは僕じゃない。
迷路の終着は、寄り添う櫂と芹霞の姿。
どんなに手を伸ばしても、僕は出口に行き着くことが出来ない。
僕はただ叫ぶだけで。
2人は僕を無情にも取り残していく。
僕は2人にとってどんな存在なんだろう。
鏡に映る小さい僕が、残忍な笑いを浮かべる。
――ドウジョウダヨ。
2人は僕の目前で笑いあい、手を絡ませ、深いキスをして。
僕がいなくても彼らの世界は決定的で。
僕は――何だ?
僕の慟哭は無声音の儘に。
身体を絡み合わせる2人には届かない。
僕という存在は、2人には必要ない。
行くな、行かないでくれ。
それは櫂、芹霞どちらに向けたものか。
僕には判っている。
行かないで、芹霞!!!
櫂を選ばないで!!!
どうして櫂?
どうして僕じゃない!?
気狂いの血がざわめく。
櫂が憎い。
芹霞を奪う櫂の存在が妬ましい。
鏡の中の僕が笑う。
笑う。
笑う。
僕の芹霞を――奪うな。
芹霞は僕のものだ!!!
そんな僕を嘲笑うかのような声が降る。
――幼馴染でも何でもねえくせに。
煌の声。