熱い。


玲くん、目覚めないかな。


熱くて仕方が無い。


さすがにあたしも呼吸が苦しくなってきて。


もぞもぞ動いて顔を少し上に上げて、酸欠金魚のように口をぱくぱくしていたら。



「………可愛い」



気づけば間近で鳶色の瞳がこちらを見ていて。


唇に、ちゅっと啄むようなキスが降ってきた。


「れれれれれ玲くん!!?」


玲くんが目覚めた。


玲くんの頬に赤みが差している。


そんな感動よりも何よりも、


「ふふふ、顔真っ赤だね、芹霞」


甘く囁くその声と、その潤んだ鳶色の瞳と、満開の色気にあてられて。



5cmも満たない超至近距離にて金縛りのように動けないあたしに、玲くんは艶やかに微笑む。



「駄目だよ、芹霞。勝手に男のベッドの中に入ってきちゃ。これ以上のことされても文句は言えないよ?

僕以外の処でこんなことしちゃ駄目だからね?」


玲くんお願い。


その吐息混じりの囁くような掠れた声を何とかして。


熱っぽく見つめてくるその甘い瞳を何とかして。


その中にあたしが映っていることが、いやに恥ずかしい。

「教授料ね?」


そしてもう1回。


唇に軽い…羽毛のようなキス。



「!!!!!!」


駄目だ。


玲くんの色気にやられた。


間近でこんな破壊力あるなんて。


なめてた。


玲くんのフェロモン、玲くんの体調に関係ないんだ。


涙目のあたしの意識は、許容量を超えた現実に薄れたのだった。