「だけどね……」
その反語の接続詞に、俺は顔を上げて芹霞を覗き込んだ。
少しばかりの期待。
「"だけど"……何だよ?」
何かを言いたげな黒い瞳は微かに揺れ――
「いや、何でもない」
曇って伏せてしまった。
「何でもなくても言えよ、気になるだろ」
「いやいや、気にしないで?」
「気になるんだって!! お前恋する少年の心を弄(もてあそ)ぶ気か?」
「な、何よその"ボクは健気な可愛い少年です"みたいな発言!!」
「失礼な奴だな、その通りじゃねえか」
「どこがよ!!? あんた相手にした香水女何人よ!!?」
ぐっと俺は言葉に詰まった。
そして俺は口を尖らせ、芹霞の額を連続デコピンした。
「痛っ!!」
芹霞が俺の中で暴れるけど、離してやらねえ。
「健常な17歳の男子高生なんだよ、俺は」
何とも身勝手な言い分だけど。
だけど俺は芹霞と同じ地平に居るただの男だってことだけは判って貰いたくて。
「普通の男なんだよ。
だから――
これから俺のエロはお前が1人で引き受けろ」
「はあ!!?」
違う!!!
こんなこと言ったら、俺ヤリたいだけの変態だろうが。
ああ、どうして俺は口下手なんだろ。
口下手というより、語弊力がないだけか?
それとも日本語力がないだけか?

