あひるの仔に天使の羽根を

 
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剣呑な事態。


胡散臭い奴ら。


腑に落ちねえことが溢れ返る。



食うとか食われるとか。


突如湧き出た予想外のエグい忌み語を耳にして、俺の精神は不安に大きく揺れている。



芹霞、生きているよな?


大丈夫だよな?


信じるしかねえ俺は、もうふらふらだとか言っている余裕はなくなって。


とにかく、1秒でも早くあいつに会いたくて。


抱きしめたくて仕方が無い。


単調な一本道がいやに長すぎて。


足がずんと重い。


まるでエレベータに乗っているような、独特の浮揚感もあり気分が悪くなる。


俺の体調はまだ回復していないのか。


その現実に鬱屈した思いを抱きながら、鉛みてえな足を動かして速度を上げると、やがて2つの扉の前に行き着く。


左の扉から、絶叫にも似た複数の騒がしい声が漏れてきて、直感的に芹霞はこちらには居ないと思った。


芹霞が居るだろうやばい場所が、こんなに騒がしいはずはない。


機械の声が何か言っていたが、俺はそれをロクにも聞かず、右の扉を潜った。


ひんやりとした斜めに続く、また1本道。


壁に断続的に連なる、警戒心を煽る赤い明かりを見ながら突き進めば、


「…!!」


突如人の気配感じて、俺は目を細めて足を止める。


黒い――神父服の男が立っていた。