「刹那…教祖は、刹那って言うのか!?」
「そ、そうだけど、どうしたのさ、突然恐い顔して…」
焦る。
刹那という名前に、心が震えてくる。
やばい、と心の何処かで警告を発する。
刹那という存在は、きっと俺という存在を揺らがすかも知れねえ。
芹霞。
俺は、"刹那"という名の教祖にお前を近づけさせたくねえ。
悪い予感がするんだ。
「芹霞の処へ案内しろ。何処にいる!!?」
「だから言ったでしょう、お姉さんは……」
「んー。"生き神様"は食べてばかり居るからね、運が良ければまだ食べられてないかもね」
紫の男――榊はそう朗らかに笑いながら、奇怪な建物の入り口らしき部分に、自分の胸にかけている十字架を差し込んで、
「警戒態勢、解除」
そう言った途端、ピーという電子音が鳴り響いて辺りは静まり返る。
「さあ、どうぞ。狂犬くん。
ここから入れば、彼女のいる場所に行き着きます」
胸に手を当て、わざとらしいくらいに頭を垂れた榊。
「悪いですが、私達はここまでです」
「あ!?」
「私も司狼くんも君を案内するという役目は教祖様より戴いておりませんし、少しばかり桜くんを痛みつけて憐憫の情が湧いているので、君を止めることはしません」
「やっぱ、お前か、桜やったのは!!!」
「はい、私です」
それは悪怯れもしない笑顔で。

