あひるの仔に天使の羽根を


あどけない無邪気な顔。


長かった髪は耳下までで不揃いに切られていたけれど。


きっと無理矢理切られたんだろう。


旭は――いない。



「よかった、君だけでも助かったんだね!!?」



僕は本当に嬉しくて。


月を抱きしめようと手を広げた。



その瞬間。




――ざしゅっ。



視界に――




真紅色の線が走った。




「え?」




火傷のような痛みを頸に感じて手をあてれば、手がぬめりある真紅色に染まって。



どくどくと頸が脈打っていて。




「きゃははははは」




更に走る真紅色。



「!!!」



僕は理解した。



月は――


手に小振りの鎌を持っていて。



僕は、月に切りつけられている。



僕が血に染まっていく。