そして久遠は、静かに指で一点を指差した。
「……?」
脱ぎ散らかされた服がある。
ああ、あのシーツ女の着ていた服か。
片付けろとでもいいたいんだろうか。
あたしは足を引き摺りながら、その服を手に取り
「久遠、これ!!!!」
その修道服を握りしめた。
「オレの部屋には、そんな服はなかった。
もう此処には用はないな、せり」
――せり。
「早く――
出ていけ」
何処までも、無慈悲なまでに冷たい瑠璃色の瞳。
「オレの前から消え失せろ」
そう言い捨てて。
久遠は、ベッドの横にあるもう1つのドアに進んで、いなくなってしまった。
あたしはその後姿を見送りながら、ぎゅっと修道服を握りしめる。
その時。
閉じたばかりのドアがまた開く音がして。
ベッドの上に救急箱が投げられた。
唖然とそれを見ているあたしに、
「……須臾に…樒に…"約束の地(カナン)"の女共に気をつけろ」
それだけを残してまたドアが閉められた。
警告だろうか。
嫌いなあたしなど放っておけばいいものを。
思わずあたしから、笑いが零れる。
「"女"……」
あの頑なな久遠の心をもってしても、
警告せずにはいられない、何かが在るんだろうか。
玲くん。
無事でいてね。

