何だよ、俺の居ない間に何があったよ?
鏡の迷宮抜ける時、俺と共に確かに櫂をも弾いていた芹霞。
あの時みたいに無視するということはねえんだけれどよ、
芹霞、皆に平等に笑いかけるんだけどよ、
気味悪いんだ、芹霞の顔が。
大昔に一度あった。
櫂が、紫堂の仕事ばかりして芹霞を放って置いた時。
正直その頃の俺は、芹霞が櫂を語る程、櫂が芹霞を語る程、2人が一緒に居る場面を見たこともなければ、俺達3人がつるんで行動することもなかったから、とりあえず芹霞から櫂への関心を無くさぬようにと、櫂がどんなに素晴らしくて周りからどう崇められているかを陶然と語っていた。
そしたら段々と芹霞の顔が、能面みたいになってきちまって。
馬鹿な俺に理由なんて判るわけねえだろ。
恥を忍んで緋狭姉に相談すれば、
――お前が暫く口を噤(つぐ)めば、坊が解決する。
俺のせいだったらしい。
俺、櫂を褒めただけだったのによ。
あの時、櫂がどう解決したのか、実は未だによく判らねえ。
ただ、あの時からだな。
俺達3人の歴史が綴られていったのは。
俺と櫂との間に、必ず芹霞が居るようになった。
俺と芹霞の間に、必ず櫂が居るようになった。
気づけば、芹霞からあの不気味な顔は消えていた。
何でまた、今、芹霞があの時の顔を?
俺、今回はあんなに櫂をべた褒めしてねえし。
俺の頭は疑問符だらけで。
だけど櫂の凄惨な表情を見てれば、冗談では済まされねえくらい深刻な状況になっているのが判る。

