「芹霞!?」
愛しい女の声に弛んだ俺の顔。
芹霞は目が霞むのか、目を擦りながら部屋に入ってきて。
「……。
随分と……。
あんたそんな趣味もあったんだ」
そんな趣味?
俺に覆い被さるのは桜と櫂。
足下の遠坂は、俺の足の抵抗に耐えきれず、ベッドの下に転げ落ちたらしい。
「……そっちの世界もいけるんだ」
芹霞の顔が引き攣っていて。
は!?
そっちの世界?
俺に覆い被さるのは桜と櫂で。
思い当たった1つの可能性を弁解しようと口を開けた時、
「今だッッ!!!!」
ごっくん。
飲んでしまった。
皆が俺を注視する。
飲み込んでしまった俺が、どうなるのかを窺っている。
げほげほげほっ。
なんだこの、不味い味。
俺は身体をくの字に曲げながら、咳を繰り返す。
あまりの不味さに、全身総毛立つ。
「煌、大丈夫!!? 一体何飲んだの!!?」
芹霞が俺の背中を摩った。
芹霞だけだよ、俺心配してくれるの。
咳をしながらにやける俺は変態か?
もし俺が。
こんな状況でなければ、速効気づいていただろう。
櫂と目を合わせない芹霞と、
目を合わせられない櫂を。

