あひるの仔に天使の羽根を

 

「――と思ったけど、流石に立て続けの呪文使うには気力ないや。こう見えてもボク、人道主義者だからねッッ!!!」


人道主義の意味が判らねえ俺が、そんなことより気になった言葉は


「……立て続け?」


俺に"使った"のは、宴直後だったはず。


そんなに時間経ってねえのか?


俺は上体だけ何とか起こして、遠坂に訊いた。



「たった今使ってきたばかりなのさ。

紫堂の"蘇生呪文"」



「あ?」


蘇生?


「……何かあったのか、櫂に」


知らず知らず固くなる、俺の顔と声。


俺は、櫂の護衛だ。


任務放棄して、ここでのびてちゃいけない立場だ。



「櫂は?」


幾分、遠坂を威嚇しちまったのか。


巫女服女は、一歩だけ退いた。


「し、紫堂は……今神崎をソファで寝かしているはず…」


「!!!

芹霞に何があった? 

――桜は?」



焦る――。


櫂も芹霞も桜も、一体何があったんだ?



「玲は?」


すると遠坂が、悲痛な顔をして俯いた。


「師匠は――捕まったんだ」


「ああ!?」


俺の思考がついていかない。


簡単に捕まる奴かよ、あの玲が。


一体何が起きたというんだよ!?