あひるの仔に天使の羽根を

 
それにしても桜をやったのは誰だ?


あの、桜を嫌に知ってる神父か?


あいつは負傷を隠そうとしていたけど、そこまで鈍感な俺じゃねえし、付き合いだって長い。


あいつに殴られ呻いていたのは、俺だけじゃなかったし。


夢から強制召還されたとはいえ、いつものキレと力がなかった。


桜は。


華奢な身体だけに力は然程ねえが、それを上回るだけの技術と敏捷性…技巧と速度がある。


大体、やられるような隙を見せる奴じゃねえ。


その桜が、誰にやられたよ?


あの胡散臭い神父かよ?


俺が聞いたってきっと答えないに違いねえ。


櫂や玲は知っているのかな。


……何だか、寂しくなっちまった。


俺がもっと賢しくて、もっと強ければ。


桜に認められるくらいの"男"であったなら、

きっと俺と桜は最強のコンビになっていたと思う。


公私共に。


昔から桜は俺にだけ冷たくて。


まあ、素を見せてくれるのも俺だけだけど。


何か俺にとっては、弟というより兄貴みたいな感じで。


家族であり、同時に仕事や格闘における好敵手(ライバル)のような。


俺的には結構、あいつを気に入っているんだけれど

桜は俺を毛嫌いしているから。



だから――

聞いたんだ。



俺が助けを呼んだときに来なかったのは、故意的かと。