俺は、芹霞が何を言っているのか判らなくて。


――永遠なんて、やっぱりないんだね。


何かを悟ったかのように。


――やっぱり櫂も違うんだ。


俺は芹霞の言葉に疑問も湧かなくて。


酷く悲しげに呟く芹霞を遠くに感じてしまって。


焦った。


――あたしと櫂は永遠だからね?


頬を寄せ合い、抱きしめ合ったあの頃の俺達を否定するのか。


他人を寄せ付けない、完全2人だけの……俺達の濃い関係を解消しようとするのか。


俺との未来を、その延長上と考えないのか。


そう思われるとは思っていなくて。



芹霞は――


"義理人情"


それ故に俺が、会いに来たのだと。


今までの長い付き合い故に、わざわざ儀礼的に挨拶にきたのだと。


旅立つ前の最後の挨拶だと。



煌が俺を散々褒め過ぎたらしい。


昔の面影を見つけられない芹霞は、会わなかったその時間に、腹を括ったようだった。


俺は。


そんな短い期間で、そんなことになっていたとは思っていなくて。


正に慮外。



義理?


何を馬鹿なことを。


芹霞はやっぱり俺の気持ちに気づいていなくて。


それだけでもう……


悔しくて。悲しくて。



俺は。


会いたいから来ているのであって。


手に入れたいから自分を変えたのであって。


それは至極単純明快なこと。


しかし芹霞にとっては不可解な部分であったらしく、俺は"紫堂"の為に変わったのだと頑なに思い込んでしまって。


当時の俺は、俺が今まで通りいつも芹霞の側にいるということを判らせたいのに必死で、芹霞が現状を…俺の変貌の原因をどう捉えようが、後でどうとでも修正できると思っていた。