「俺を見ろ、芹霞ッ!!!」


櫂がそんなあたしを荒々しく抱きしめる。


あたしは――

強くなる須臾の匂いを突き放す。


「せ……りか、芹霞ッッ!!!

お前が俺から離れると思っただけで、こんなに荒狂っている俺をよく見ろッ!!!

お前にだけだ、俺がこんなになるのは。

そんな俺を……突き放すなよッッ!!!」


――芹霞ちゃあああん。


「頼むから……。

なあ――…

頼むから、俺の傍にいてくれ。

頼むから、俺から離れないでくれ。


俺は――お前を失う為に

他に譲ってやるために

今まで耐えてきたわけではないッ!!!」



そこには『気高き獅子』の姿はなく。


櫂が――


8年前にあたしを切り捨ててでも手に入れたがった紫堂の次期当主としての顔はなく。


だとすれば。



――芹霞ちゃあああん。



あたしは何のために櫂に棄てられたのかな。



何のために、寂しい思いを耐えてきたのかな。



櫂、判っている?


あたし寂しかったんだよ?


8年間もずっと――。



「大丈夫。あたし達に本当の永遠があれば、また元に戻れるから」



あたしは笑う。


どこまでも笑う。


どこまでも虚しく笑う。



「なかったら――

一体どうなんだよッッ!!!?」



血を吐きそうな叫び。



「どう……なんだろうね」



考えたくは無いけれど。


というより。


あたしは"今"が手一杯で、先のことなんか考えている余裕はないんだ。


少しでも。

少しでも。


"今"を改善させたくて必死なんだ。