あひるの仔に天使の羽根を

 


だけど。



あたしの矜持が邪魔をする。




須臾という存在の出現1つで


12年越しの付き合いも


言葉がなければ理解しあえないのかと。


そんなに脆いものなのかと。



あたしの中で、嘲笑う別のあたしがいる。



"本当に永遠?"


"独り善がりの思い込みじゃない?"


"言葉がなければ理解できないなら、そこいらの普通の関係と同じよね"



ぽろぽろとあたしから涙が零れる。



「櫂――」



あたしは俯いていた櫂に声をかけた。




「あたし達、

近くに居すぎたのかな?」



ぽろぽろ、ぽろぽろ。



「……芹霞、お前なんでそんなに泣いて……」



初めて気づいたように、慌てる櫂。


あたしが声をかけなければ、あたしが泣いていることに気づかなかったのかな。



「櫂」



あたしは、泣きながら笑った。




「少し――離れていよう?」