「真っ先に僕だけを呼んでくれる?」


切なげな鳶色の瞳が間近に迫る。


あたしを問い質すようなその瞳の力に、


「うん?」


あたしは少しだけ怯んだ。



「本当に?」



まだ問い続ける玲くん。



「櫂じゃなく――

僕を呼んでくれる?」



どうして此処に櫂が出てくるのか。


「櫂は、あたし如きに付き合ってる暇ないでしょう?

ちゃんと玲くん呼ぶってば」


――ずきん。


ほら、また胸が痛くなってきた。



「本当の本当?」



「本当の本当。やだなあ、そんなにあたし、信用ない?」



すると玲くんは俯き深く考え込んで



「じゃあ由香ちゃん。少しだけ行ってみようか」



いつもの通り、ふわりと微笑んだ。


何だか玲くん嬉しそうだ。


そんなに行きたかったんだろうか。


何だかあたしはいいことをしたように思えて、満足だ。