あひるの仔に天使の羽根を



無視されている気がして。


玲には微笑むのに。


――来ない。


いつものように芹霞が俺の元に来ない。


――俺は永遠に、お前だけがいい。


そこまで嫌だったのか。


そこまで拒絶されるものなのか?


煌や玲とは密な時間を過ごしても、無防備なまでに近寄っていくのに。


どうして、俺の処に来ない?


俺は芹霞の兆候(サイン)を見逃しているのだろうか。


また、オトメゴコロとかいうものなのか。



話し合いたい。




俺に理解させてくれ。




このままだと俺、お前を見失う。




――芹霞ちゃあああん。




戻ってきて欲しい。




早く戻ってきてくれ。





だけど――



芹霞は煌の居る部屋から戻ってこなかった。




どんなに待っても



帰ってこない。



戻ってきたのは、疲れ果てたような玲だけ。


俺が芹霞に上着をかけて部屋から出た時には、既に玲の髪は鳶色だった。


そこに至った経緯は不明だ。


女の洋服にいつもの玲の頭は、何とも不釣り合いだが、性別を偽る必要がなくなった分だけ、玲の顔は爽やかに思う。


玲には悪いが、須臾の相手をして貰って、俺は芹霞の元に行こう。


そう思って、俺は玲を呼ぶ。