闇の力は芹霞と煌の結界の形となり、押しつぶしそうな巨大な食卓を弾き飛ばし、そして芹霞は、また俺の闇に惑って意識を無くした。


この場では、風の力や玲の電磁波の力は無効でも、やはり闇の力だけは有効らしいと、気づいた時には俺の身体が震えていて。


芹霞が生きているということに歓喜せずにはいられなかった。


そして須臾の棟にて、せめて俺の残骸だけでもと上着を芹霞にかけて。


そう、芹霞が眠るあの部屋から出なければ、俺はずっと芹霞と共に居れたのに。


須臾が俺を見つめてくれば見つめてくるほど、俺は芹霞に会いたくて、その声を聞きたくて仕方が無い。


愛想笑いも限界だ。


疲労困憊という言葉が、意識に上る。


戻った玲の存在にほっとする。


玲の話では煌の状態が思った以上に悪いらしい。


煌の特殊な身体が災いして、あらゆる解熱剤に対して免疫があるらしく、まるで効かないばかりか、傷を負った左腕が壊死寸前だという。


更に桜に限っては、折れた肋骨を通り越して、脾臓あたりが出血しているらしく、かなり強い鎮痛剤でなんとか痛みを騙している状態らしい。


"約束の地(カナン)"における医者や、各務の従医も現れたが、皆匙を投げた。


ここにはしっかりとした病院施設もないらしい。


「せめて……お前に塗った、旭の軟膏でも貰ってくればよかったよ」


玲が項垂れるようにしてぼやいた。


成分が不明な、不思議な塗り薬。


俺の傷はもうほとんどない。


それさえあれば、煌の傷は…熱は治まったのか。


だけどその旭ももう――。