いつものように冷たくあしらいたい気持ちばかりが大きくなるけれど、この女主の気分を損ねたくない気もして。


少なくとも煌や桜の手当をしてくれ、更には自分の寝床まで提供して、俺らと共に不眠で介護してくれたのだから。


ここで気分損ねて、男女兼用が赦される唯一の部屋を追い出され、また男女別の棟に追いやられたくはない。


それだけの思いで、その視線に耐えた。


俺にはこんな視線や表情は要らない。


はっきりいってどうでもいい。


迷惑だ。


俺が欲しいのは芹霞だけだ。


芹霞からこんな態度を向けられるためならば、地面を這いつくばることさえするだろう。


それだけ芹霞という女は俺にとっては特別で。


会いたい。


どうしてずっと芹霞の側に居なかったのか。



あの時――


嫌な予感がして玲と共に女子棟に走った時、


突然俺の胸につけている、血染め石の片割れが発光した。


俺の闇の力が突如膨大する気配があった。


だからこそ、同じ石を身に付けた芹霞の危機だと。


俺は感じることが出来て。


これ以上ないというくらい全力で走り、滑り込むようにしてその部屋に飛び込めば、横たわる煌を抱きしめて覚悟したように目を瞑る芹霞の姿が目に入り。


俺は、俺自身に使用することを禁じていた闇の力を放った。