「5日間が長いのか短いのか判らないですが、それまでは私が皆様のお力になれますよう、尽力いたします」


そう微笑んだ後、悲しげに目を伏せた須臾は、


「"聖痕(スティグマ)の巫子"とて、犯してはならない決まりがあります。

それは恋をしてはいけないこと。

ねえ、恋って一体なんですか?」


恋をしている女に変貌する。


ねっとりとしたその眼差しは、まるで成熟した女のようで。


清らかさとは程遠い、情欲に満ちたもののようで。


だけどそれは一瞬で立ち消え、すぐに清楚な面差しに変わる。


「どうして私は、こんなにも紫堂様のことが気になるのでしょう?」


「どうして――私にそんなことを聞くの?」


思わず僕から漏れた言葉。


「貴方も――同じような境遇だという気がしたから」


「え?」


「恋をしてはいけない環境にいるのではないですか?」


正直――


「……!!」


僕はこの純真な、澄んだ眼を恐ろしく思った。


伊達に――

巫子の名を継いでいるわけではないと。


僕の想いは罪なのだと

彼女に暴かれるのだろうか。


須臾の声は弱々しくなった。


「あの――

紫堂様が抱きかかえて連れてこられた人は」


芹霞のことか。


「紫堂様の何なのですか?」


僕の心臓はぎゅっと締め付けられた。


「あの人と紫堂様は、どんなご関係なんですか?」


恋する気持ちは――判る。


だけど。


どうして僕に聞く?


僕があの2人にとっては、部外者に思ったからか?


その澄んだ眼は、そう捉えたのか?


僕から一体何を言わせたい?


櫂と芹霞はお互い強く思い合っていて、だから君の出る幕はないのだと言えばいいのか。


それとも。


それはあくまで櫂の片思いだから、気にせず突っ走れとでも言えばいいのか。