あひるの仔に天使の羽根を

 


「あ、師匠!! 目覚めた葉山が急にやってきて……」


救いを求めるように玲くんを見上げた由香ちゃん。


「桜ッ!!! 寝てないと駄目じゃないかッッ!!!」


玲くんが一喝し、桜ちゃんの腕を掴んだ。


「私はいいんです、玲様。

私が煌をこんな目に合わせた。

せめて――…くッ…」


そして桜ちゃんは綺麗な顔を辛そうに歪めて、お腹を押さえるようにしてぐらりと前方に傾いた。


ぽたぽた。


床に滴り落ちたのは――血?


血――!!!?


「お前、内蔵やられてんだぞ!?

煌のこと言えない有様で、死にかけていたんだぞ!?」


桜ちゃんを支えたのは、悲鳴のような声を上げた玲くんで。


玲くんの両腕の中に収まった桜ちゃんは、玲くんに応えることなく意識を失っていた。


ありえない、こんな光景は。


桜ちゃんはいつでも強くて。

煌がいつも引き合いに出すくらいに強くて。


桜ちゃんの怪我した姿など、あたしは今まで見たことはない。


同じ状況にいて、怪我するのはいつも煌ばかりで。