あたしは――陽斗に助けを求めるように、その部分の服地を手で掴み、そのまま俯いて固まってしまった。
動けない、といった方が正しいのかもしれない。
「あ……」
口から言葉すら出てこない。
しかも――
3人が醸す、その空気は華やかな"美"に満ちていて。
凄く――撥ね付けられる。
そんな世界に無縁なあたしなど
闇に穢れたあたしなど……
決して近づくことは赦されぬ、あまりに神聖な絶対的不可侵の領域。
酷く――惨めになった。
「芹霞、どうした? 具合悪い?」
気づけば。
あたしの顔を下方から覗き込んでいた、心配そうな鳶色の瞳。
さらり。
鳶色の髪が玲くんの首筋に落ちた。
櫂は――
少女の横に座ったまま、こちらを見ているだけで。
少女と同じ、あたしを案じる顔を向けているだけで。
壇上からあたしを見下ろすだけの神々しく輝く幼馴染は、
同じ血を持つ玲くんのように、こちら側に下りてきてくれない。
所詮は相容れぬ存在なのかと
何だか泣きそうになった。
「玲……」
聞きたいことはあるけれど。
例えば此処は何処なのかとか。
昨日のあの女はどうなったのとか。
いつあたしは着替えたのとか。
どうして玲くん、あの少女の前で鬘をとったのとか。
じゃあもう"玲くん"に戻した方いいのとか。
どうして女の部屋に櫂も一緒に居るのとか。
桜ちゃんや由香ちゃんは何処にいるのとか。
その他本当に色々あるけれど。
だけど、
――芹霞ぁ……。
「煌は?」
まず優先すべき事柄は、煌だ。

