あひるの仔に天使の羽根を



何で?


どうして?



少なくとも――


あたしにとっても櫂にとっても、双方面識無い女性は、あたしのいない処で櫂に近寄ることはなかった。


というか、近づけさせなかったのだ。



櫂が。



どんなに女達が熱い眼差しを櫂に向けていても、完全無視の櫂は、あくまで無愛想の鉄面皮で。

それでも執拗に追いかける女達には、容赦ない侮蔑の眼差しを向け、女達を心底震え上がらせて、あまりの恐怖に号泣させても平然としていて。


だから、あたしは櫂の未来を心配していたのだ。


仮にも紫堂を背負う者。


近寄る女がいかにウザいか、櫂の気持ちは判らなくもないけれど、櫂はそこいらの普通の男子高生ではないのだから。


すると煌も玲くんも、それは意味ありげな苦笑を見せて、


――でも、芹霞だけは違う。


それはあたしは、櫂とは永遠以上の強い絆を持つ幼馴染だから。


だけど今――


昨日あったばかりの少女が、何故いるの?


どうして櫂の隣に座っているのの?

どうしてそれを櫂が赦しているの?



――どくん。



陽斗が苦しげな音をたてた。