確かに白く光る櫂の血染め石は、
あたしと煌を球状に包み込み、
それはまるで――
「結界!?」
目の前に迫り来る食卓を、いとも簡単に遠くに弾き飛ばす。
晴れる視界の中、
飛び込んできたのは
「櫂!!?」
石と同じ色に発光する櫂の姿。
「間に合った……ッ!!!」
あたしの姿を確認した櫂は、
――芹霞ちゃあああん
悲痛な翳りで覆われた端正な顔でこちら走ってきて、
ふわり。
あたしはシトラスの香りに包まれる。
「櫂、煌が…煌がッ!!!」
あたしは泣いていた。
怖かったのと、
安心したのと。
「早く煌を……ねえ煌がッ!!!」
どくどくどく。
早い鼓動は――
櫂からで。
「大丈夫だから」
子供に言い聞かせるような、櫂の優しい声音にまた涙が流れ、
あたしは――
すっと意識を闇に沈めた。
久々の――
懐かしい闇の中に。
その闇は、あたしの首筋の血染め石から流れてきたのか、
それとも持ち主である櫂から流れてきたものか、
それ以外の場所から流れてきたものか、
何1つ知る術もなく――。

