「旭くんの死で混乱しちゃってたんだよ。

ありえないでしょ、幼馴染の……庶民であるあたし相手に」


俺は思わず芹霞の腕を掴んで、首を横に振る。


「櫂。ずっと永遠……以上でいるよね?」


喉の奥がひりひりと焼き付く。


「芹霞……なあ…――」


俺だって永遠以上を求めている。


俺の想いは、芹霞との絆を強めるだけのものだと、決して弱める類のものではないと、反駁しようとした俺に向けられた、有無を言わさぬ黒い瞳。


緋狭さんと同じその強い瞳に、


俺は――縛られる。


「永遠が絶たれてしまったら、

あたしどうしたらいい?」


それは泣きそうにも見える瞳。


「櫂まで、あたしの前からいなくなっちゃやだ。櫂とは永遠以上で居たいの」



「芹霞」


恐らく――


俺は低い声を出したのだと思う。


芹霞がびくっと震えた。


極力抑えてはいるけれど、昂ぶる心は心で暴れていて。



「なぜ――

そこまで"永遠"を神聖視する?」


「……え?」


それは俺が持ち抱いていた、昔からの疑問。


俺だけは特別なのだと解釈してきたが、2ヶ月前に芹霞に"特別"を否定された。芹霞にとって永遠は、特別と等しいものではなく、かなり俗めいた格下のものだと一蹴されてしまった。


だとしたら、芹霞の求める"永遠"とは何だ?


何故それを俺だけに求める?


"特別"ではないのだとしたら、


「お前――」


俺の存在は、お前にとって一体何だ?


どうして俺だけ、そんなに拒む?


――代わりにえらばれたのがあなたなら。


考えない様にしていた旭の言葉が蘇る。



「何があった?

……過去に」


――櫂まで、あたしの前からいなくなっちゃやだ。


「誰が居るんだ、

お前の中に――」