あひるの仔に天使の羽根を


その眼差しの先には少女がいる。

仲間がいる。


そして彼らの目の中にも、漆黒色が映っていて。


それは信頼。絆。そして――愛情。


帰るべき場所は此処だと、少年は思う。


例えこの先、再び記憶を失っても、彼らが自分を取り戻してくれるだろうし、その逆も然り。


「もう…"初めまして"はなしだからな、芹霞」

「え? 何のこと? 初めまして?」


まるで記憶が無い少女に。


「俺なんて、ワンコだぞ、畜生だぞ?」


それでも愛情を注がれている存在。

たった1つの奇異なる存在。

そこに不安を感じるのは、少年だけなのか。


人だとか、人じゃないとか。


そんなものは関係なく。


欲しいのは、ただ1つの…特別な愛情。


それを知ってか知らずか、少女は笑う。


何処までも綺麗に笑う。


「醜くてもいいんだ。

そこにあるものが真実ならば」


そう呟いた漆黒色の少年。


特別視に堪えきれず、群れから逃げ出した醜いあひるの仔は、美しい仲間の群れの中に混ざって"特別性"を埋めた。


そんな存在になるくらいなら。


どこまでも目立って、その存在を少女に訴えたいと思う。