「紫堂櫂ならきっと…それさえも昇華してしまう気がするんだ。あいつなら、幻術に頼らずしても、きっと"死者"さえ蘇生させられる"強さ"に変えられる。希有な闇の使い手だしね。更に、貪欲さを思ってみても…"運命"って奴なのかね?」


「刹那様…」


「本当はね、せりを掻っ攫おうと思った瞬間もあったんだ。だけど…せり、こんなもの落としたんだ。あの橙色の男が尻を叩いた時」


オレが手渡した紙を見て、蓮が表情を曇らせる。


「オレとの"永遠"は完全に責務と罪悪さ。例えこの先、オレがせりに愛を乞うたとしても…それは同情。"真実"じゃない。

それにさ…紫堂櫂は、いい男達を部下に…友にしているんだ。紫堂の為に身体を張り…"玲"は命さえも覚悟していた。あの小さい…"桜"とてね。どんなに傷ついて、どんなに心で泣いていても…紫堂に対する信頼感は揺るがない。

そんな奴らに愛されているんだ、せりは。

何度でも、せりは彼らと出会うだろう。彼らとの接点を見出すだろう。オレなんか…13年前の…しかも忘れられた記憶だけの繋がり。元よりオレなど…出る幕もなかったんだろうよ」


幸せに…


幸せになれよ、せり。


誰以上に愛しい君だから。


誰以上に幸せになれ。



ありがとう、来てくれて。

ありがとう、共に生きようとしてくれて。


その気持ちだけで十分。



「本当にくるのかなあ…お姉さん。"月2度の訪問"。紫堂櫂や他の奴らが止めないかなあ、そう思わない、蓮?」


「大丈夫だろう。"引き分け"の証人は多数居る」


13年間、来るかも知れない日々を待っていた毎日ではなく、


必ず来てくれる。

未来の光景が、初めて鮮明になったんだ。