あひるの仔に天使の羽根を

 
「変わるんだ、オレの瞳」


鏡では、いつも瑠璃色しか見たことがない…オレの金緑石。


「オレはね…もう穢れすぎてしまってるんだ」


思い出すのは、無感情のままで…流されるように居た自分。


「爺の奸計によって皆を蘇生させたことが、そもそもの間違いだった。オレの術では、魔方陣の力を覆せない。仮初の"生"だけではなく、此の地のルールにまで縛られる皆を救えればと…せめて"断罪の執行人"にて、抗える者達を真実に還してきたけれど…傍目ではただの人殺し。

各務の唯一の生者である千歳を盾にとられ…各々の"夢"を繋げた、随分と滑稽すぎる茶番劇を演じて、更には1日13人もの女を相手に魔法陣の魔力蓄積にも協力させられた。だけど、千歳は…須臾に殺された。優しい弟だったのに」


懐いてくるのに…祖父と父と同じ顔だからと、弾いてしまったのはオレ。

見掛けで判断し、結局"死"に至らしめたのはオレの罪。


「オレが利用されていた…あんな多角面から力を補充していた魔方陣を、まさか"裏"まで壊されるなんて、爺も思ってなかったろうね。あの時の爺の顔は…見物だったよ」


そしてオレは言葉を切って、1つ深呼吸をする。


「オレは――…

傲慢な物言いで、生の追求を怠けて、女を…母親さえも抱いてきて。せりに嘘をついて、だけどせりが欲しくて、せりから"永遠"を一身に受ける紫堂櫂に嫉妬して。挙げ句に紫堂櫂の挑発に乗って怒り任せに対戦し、勝てなかった。


傲慢、怠惰、色欲、虚偽、強欲、嫉妬、憤怒…ああ、基督教においては、虚偽は暴食だったか。生きる為とはいえ"天使"を喰らったオレは、7つの大罪を地で生きてきた男だ。

そんな男に、せりは…相応しくない…」


だから言葉で拒絶した。


だけど"言霊"は使えなかった。


その勇気まで…なかった。


――死んじゃ駄目!!!


ああ、どんな嬉しかったことか。


"生きる"意味を、せりだったら判っている。


「罪なんてそんなもの…生者ならば、ありえる事象です」


生者だと…言ってくれるんだね、蓮。