あひるの仔に天使の羽根を

 

それでもいいと思ったんだ。


オレと刹那は一心同体。


せりが"刹那"と呼ぶ度、オレの心は救われる。


奇妙な三角形(トライアングル)が、例えオレの自己満足で終わることになっても、オレはそれでもいいと思っていた。


ただ1つの危惧。


刹那の狂気はまだ燻っている。


"永遠"、"愛"…もしそれが結びついて、キーワードとして刹那を刺激してしまったら…また刹那は、嗜虐的な…食肉行為を示すのではないか。


そう思ってせりに忠告したのに…


悲劇は起きてしまった。


逃げるせりに、更に刹那は狂ってしまった。


邪痕まで植え付けて、せりの"生"を縛ろうとした。


縛るだけならまだいい。


喰らうつもりだった。


だからオレは、術によって邪痕を封じて、


オレ達各務の者が使える…その闇よりも遙かなる使い手に、これ以上の恐怖を感じなければ、蘇らないと…咄嗟にその条件を言霊に乗せた。


ありえないと思っていた。


闇の使い手なんて滅多にあるわけではないし、大体各務を凌ぐ血流など聞いたことはない。


食うか食われるかを迫る刹那以上の恐怖だって、せりにはもうありえないだろう。


そしてオレは――


意識を…"生"を失うことになった。