あひるの仔に天使の羽根を



「そういうのは、オレの居ない処でやれよ。気持ち悪い」


威嚇のような低い声に、はっと現実に帰る。


あたしは。


そうだあたしは――



「久遠。刹那。

芹霞は渡さない」



向き直った櫂が…

久遠と対峙する。



「言ってるじゃないか。オレは最初から…

せりが嫌いなんだって。

目障りだ、早く行けよ!!!」


苛立ったように、乱暴に言い放つ。



ああ――。


駄目だ。


やっぱり。


どんなに櫂のことが好きでも。


一緒に居たいって望んでも。



――約束だよ、せり。


あたしは彼を置いてはいけない。



「櫂、やっぱりあた「久遠、立て。勝負だ」



櫂が言った。



「は!? 櫂、何を……」



「このままだと芹霞が惑う。だったら。きっちりと勝負をつけて、正々堂々と芹霞を連れ帰る」


それは悲壮でありながら真剣で。