あひるの仔に天使の羽根を


あたしは櫂に酷い仕打ちをした。


櫂からの"永遠"が感じられないと思えば、懸命に櫂との"永遠"に縋り付き、櫂が嫌がる8年前の姿まで引き出しておいて――


――僕を…捨てないで。



確約したはずの"永遠"を、あたし自ら切り捨てて。


全てを無かったことに、反故にしようとした。


――……判った。


だけど、了承出来る櫂に納得いかなくて。


――芹霞を置いて帰るぞ。


――あ…神崎、って呼んだ方がいいかな。


悲しさよりも、絶望よりも、"怒り"という攻撃的な衝動に囚われて。


矛盾、自分勝手、理不尽。


嫌になるくらい判っている。


嫌になるくらいの醜悪な女だ、あたしは。


だけど。


それでもあたしは、櫂をすんなり手放したくなかった。


もっと執着を見せて貰いたかった。


――芹霞ちゃあああん。


あたしだって、櫂に負けず劣らず"貪欲"だ。


櫂に選択肢すら与えたくない。


あたしだけが櫂を縛り付けたい。


――アタシヲシバッテ。


身動きできないほど、"永遠"で縛り付けたい。


―アナタノ"エイエン"デ、ウゴケナルホドシバリツケテ。


まさか、それを櫂に利用されるなんて。


――早く…追いかけて来いよ、馬鹿。


何処までも、強気で不敵で…好戦的で。


――もし完全な別離になったら…そう思ったら、凄く怖くて……。


誰もが畏怖する『気高き獅子』も、震えているなんて。


櫂は、完璧主義が信条であるはずなのに、そこまで不安に思っていたの?


ああ、なんて愛しい。


ねえ――櫂。


――俺を"真実"にしろよ


そんな最低な心を持つあたしに――


まだ"永遠"をくれるというの?


まだ"好き"でいてくれるというの?