あひるの仔に天使の羽根を

 

「………。お前は!!!

本当に…ひと言が余計なんだよ!!!

もっと、察しろ!!!」


櫂は忌々しげに顔を歪ませて――


「いひゃい、いひゃい!!!」


あたしの両頬を両手で横に引っ張った。


あまりの痛さに涙が出てきた時――



「……遅いんだよ。

早く…追いかけて来いよ、馬鹿」



櫂に荒く…掻き抱かれた。



「俺が――…

お前を残して帰るはずがない。

他の奴にお前を任せるはずがない」



その腕は小刻みに震えていて。

櫂の胸からは、狂ったように早い心臓の音。



「……櫂?」



「は…はは。情けないけど…もしお前が。あっさりと俺が去るのを許したら…、もし完全な別離になったら…そう思ったら、凄く怖くて……」


首筋に埋められた櫂の頭部も、震動していて。


「俺は、過去の男にはなりたくない。

お前は…約束したじゃないか。

俺が記憶を取り戻した後だって。



俺が…"永遠"だって…」



上げられた端正な顔。


憂いの含んだ切れ長の目。



「浮気…するなよ」



揺れて揺れて…それは切なげに。


熱く…あたしを見つめていて。



「俺を"真実"にしろよ」



あくまで、正当なる"永遠"は自分なのだと。


今でもそう言ってくれるの、櫂。