「俺が連れ帰ると言えば、お前は帰るのか?」
静かで穏やかな声がまた腹立たしい。
「帰るかも知れないでしょう!!? やってもみないで、ただの先入観でとっとと去っていくな、薄情者!!!」
「先入観? じゃあ…帰る確率は高いのか?」
「その余裕ぶりがムカつくわね!!! 高いかも知れないでしょ!!!?」
「ふうん? お前がそこまで言うなら、連れ帰ってやってもいいが?」
櫂の悠然とした笑いに、カチンとくる。
「"やってもいい"ってどういうこと!!? 誰があんたと帰りたいなんて言ってるのよ!!!」
「あっそう。帰りたくないなら、置いていくまで。さあ、皆帰る…」
またくるりと背を向けようとした途端、あたしの心が爆発した。
「帰り――…
帰りたいわよ、馬鹿!!!
櫂と一緒に帰りたい、これからもずっと一緒に居たい!!!
あたしを置いて帰らないでよ、帰っちゃわないでよ!!!!」
それはあたしの封じていた"心"の慟哭。
聞き分けのない子供の駄々。
「……俺が、好きか?」
その声が掠れ、少し震えていたような気がしたけれど、自分で精一杯のあたしはそんなのお構いなしで。
「好きに決まっているじゃない!!! 何年好きでいたと思うのよ、それくらい櫂が一番、十分過ぎる程知っているでしょう!!?」
「久遠や刹那より…誰よりも?」
「どうしていつも張り合おうとすんのよ、あんたは!!! あたしの"永遠"を疑う気なの!!!? あたしの"好き"を疑うの!!?」
そして――
「大体ね、玲くんも煌も桜ちゃんも…久遠も刹那も皆、大好きに決まっているんだから、比較したって意味ないでしょうが!!!比較対象の選択自体が間違ってる!!!」
すると。
「ぶははははは」
それは玲くんの笑い声。
「何か…俺まで凹むわ、報われなくて」
煌の嘆き。

