我儘だって判ってる。
狡い、卑怯。
判っている。
戻れないと判っている癖に、自分で距離をあけた癖に。
櫂から距離を詰めて貰いたくて仕方が無いんだ。
もっと、あたしを求めて貰いたくて仕方が無いんだ。
――芹霞ちゃあああん。
好きになったのはあたしの"真実"。
確かにきっかけは、無意識的に13年前が関係していたのかもしれないけれど、この手を離したくないという今の想いは、決して"擬態"じゃない。
"擬態"は"擬態"なりに…あたしにとって真実となったんだ。
あたしは…櫂を、紫堂櫂として好きだ。
櫂だから、12年も一緒に居たんだ。
櫂だから、"永遠"に生きたいと思った。
その根底が"身代わり"だとしても。
それ故に、誰以上に櫂に愛を注いで、大切に思い、気持ちを育て上げたんだ。
全ては、櫂へと繋がる事象だとしたら、13年前のことさえ必然的なことで。
不謹慎極まりないけれど、あのことなくして櫂に此処まで固執しなかったと思えば…13年前の悪夢もあたしにとっては意味を成すもので。
それくらい、櫂という存在は大きくて。
それくらい、櫂が好きで。
だから余計に腹が立つんだ。
あたしの居ない人生を…平然と始めようとしている櫂に。

