「駄目だよ、君を"あちら側"には行かせないから」



とっても欲しいの。


ゆらゆら、ゆらゆら。


これが手に入るのなら、他に何もいらないから。



あたしの視界から、玲くんは薄らいで。


そして――



「芹霞!!」



玲くんが――



――バシーン!!!



あたしの頬を手で打った。



玲くんが。


優しい玲くんが!!!




「やるな、玲。我が妹を、私の前で叩くか」




緋狭姉が、豪快に笑っていて。


「!!!」


途端見開かれる鳶色の瞳。 

振り乱される鳶色の髪。


「す、すみませ…ご、ごめん、芹霞。

い、痛い? 凄く痛かった? 

ごめん、本当にごめん。

ああ、何したんだろう、僕」


おろおろ、おろおろ。


その姿がなんだか可笑しくて。

いつも余裕な"大人"の玲くんが、小さい子供のような可愛くて。


ああ、ぎゅうがしたくなる。


痛みがどうのというより、滅多に見れない愛らしい玲くんの姿が、

あっという間にあたしの興味を独占して。



「穢らわしい、そこから離れろ!!!」



怒声を放ったのは白皇。



「"彼女"に近付くな!!!」



今までの慇懃さは何一つなく。


ぎらついた眼差しに見えるのは、余裕のない独占欲。


そこに見えるのは、明確な――


嫉妬にも似た――狂気。