そして――

視界からすっと消えたように思えた緋狭さんは、

上半身を垂直に倒し、片足を軸にして、反対の足を大きく旋回させていて。


それはフィギュアスケートの回転(スピン)のような流麗さで。



「!!!」



生じる鎌鼬(カマイタチ)。


あまりに凄まじい足の威力に、空気は簡単に裂けた。


離れた俺達でさえ、びりびりとした鋭すぎる空気と後方に押しやる爆風を堪えるのに必死で。


直接的ではないにしろ、その影響を濃く受けた神父達は、殺人級の凶刃に服を…肉を切り裂かれ、しかしああ…それは直接的起因ではなく。

それに至る前の、彼女の足技の風圧で、既に意識を奪われていたようで。


脆(もろ)い、脆すぎる。


否。


彼女が強すぎるのか。


ばたばたと崩れるその身体は、哀愁さえ漂って思えるから不思議だ。


そして放たれる何か。


煌と桜が手で掴めば。


「簡単に手放すな、馬鹿者が。

さて――。

妹は道具ではない。返して貰うぞ」


芹霞の身柄は、紅皇の手に。


白皇は引き攣った顔のまま、動けないようで。


あまりに見事な芹霞奪還に、俺は溜息をつくしかできない。



それはいつもながらの…彼女の姿なれど、

その颯爽さが非常に羨ましくて。



「圧勝、だね」



玲も嬉しそうに呟いた。