「あの女を殺し尽せ!!!」
"魔法"は凄まじいエネルギー放射となって、1つの…うねるような力になっていく。
それはまるで、共食いをして力を増大させる蠱毒のように。
「緋狭姉、腕環の力を!!! それとも金翅鳥(ガルーダ)か!!?」
「いらぬ。面倒だ」
「は、はああ!? め、面倒って…いくら緋狭姉でも、あんなの…あんななんだぞ!!!?」
「表現力に乏しい駄犬め。お前は黙ってそこで見ていろ」
煌の言葉を即座に切り捨てた緋狭さんは、
凛然とした姿のまま、迫り来る力を前に隻腕を伸ばして。
「疑似は真実を凌駕できぬ。
これは…定理だ」
指先に灯った小さな赤い炎。
それは突如、轟炎と化し。
暴風に煽られたように、
上下左右に大きく拡がり
巨大な十字の炎の壁となって――
「紅蓮の護封壁(ファイァークロス)!!? 片腕で!!?」
白皇の驚きの声。
「ほう、一度は敗れた技の名前はまだ覚えておるか。
何をもって全盛期とみなすのかは知らぬが、片腕だから何も出来ぬと…勝手な"思い込み"こそが、お前の敗因だ、シロ」
炎の十字架は――
向かわれた力全てを、轟音と共に呑み込んだ。
消える全ての色。
戻るのは奇妙すぎる静寂。
思考が認識に至らない、そんな表情の観客達。
俺もその内の1人なのかも知れない。
それは一瞬の幻の如く。
それは刹那に終わった出来事で。
鳥肌が立つような壮絶さの余韻を残したまま、
何とあっけなく――。
何と愉絶に――。

