赤い外套を纏い、五皇の…最強の名を戴く紅皇の証を襟に止めて。
気圧されるのは色ではなく、その存在感。
何処までも崇高で、何処までも神々しい。
「何故此処に…幾重にも罠を仕掛けた筈…」
俺がどんなに上り詰めても、彼女を超えることが出来ない。
彼女だからこそ、俺は超えられない。
それが芹霞の…実の姉。
「あんなもの如きで私を抑えられると本気で思っていたか。
私の気配を掴めぬ時点で、お前は坊にすら負けたのだ」
気配と言うより、俺の信念。
紅皇は来てくれる。
それは――
「判るな、シロ。私が此処にいるという意味が」
信仰にも似た、絶対的な信頼。
「随分と、私の可愛い弟子達も妹も痛めつけてくれたじゃないか」
艶然とした笑いに見え隠れする、その情は"怒り"。
「きっちり礼はとらせて貰わねばなあ?」
そう不気味な笑い浮かべた緋狭さんが、白皇に近付くべく…神父達の目の前に足を踏み出した。
白皇の顔から、汗が噴き出ている。
「え、ええい、殺す対象はまず…目の前のその女だ!!!」
「お姉ちゃん!!!?」
「仮性の術が、真性に勝るわけ無かろう」
緋狭さん1人に向けられた魔方陣は…やがて猛獣や神獣の姿を象り、明確な殺意を持って彼女に向かう。

