僕は。


流れる気狂いの血が目覚める惧れに、"僕"を解放できずにいる。


気狂いになることによる"喪失"を恐れ、

全てを諦めて笑い続けてきた僕は、

芹霞を求めれば求める程、気狂いを極端に恐れるようになった。


芹霞を求める姿が、もしより狂気じみてきたら、

僕は全てを失うかもしれない。


"僕"がもし気狂いであったなら。


友も芹霞も確実に失う。


そんなこと――

今の僕には耐えられないから。


だけど、我慢して笑い続けられない程、

芹霞に関しては余裕がなくなっているのが判る。


だから時折、心ならずも見せてしまう。


僕の狂気……裏面を。


今でさえ、ただの傍観者ではいられないのに。


芹霞を愛しそうに見つめる煌が疎ましくて。


そんな芹霞を自分に引き寄せる櫂が妬ましく。


僕の居場所のない状況に吐き気がしてくる。


僕のものになって欲しい。


僕を選んで欲しい。


渇望は空回るばかりで、芹霞と交じりあえない。


芹霞、こっち見て?


僕の中に飛び込んできて?


ねえ――

僕はここに居るんだよ?