パチパチパチ。


「しかしここまでスケール大きく破壊されれば、気分爽快、痛快」



拍手の音に我に返った俺は、白皇の顔に張り付いている…小馬鹿にしたような嗤いを見る。


「いやはや、レーザーを撃てる衛星を持つなどさすがは紫堂財閥。それを操り、尚も此の地の闇の力をも操るなど…さすがは紫堂の血の連なる者」


その物言いの不快さに、俺も玲も目を細めた。


「その分だと気づいておられますな。この塔は、11番目のセフィラに対応する。私が"基礎"を作った…あの"試作品"を壊してくれたおかげで、行き場を無くした…"天使の共食い"に生じるエネルギーを全て吸い込み、この血染めの塔の糧としていることに」


血色の具合は、エネルギー充電の進行具合といった処か。


この部屋は最上階というものではないが、壁上部の色合いは既に赤だ。


憎らしい程、白皇の思惑通りなんだろう。


「破壊する術なきと高を括っていた私にとって、些か予定外な事の運びとはなりましたが、"結果"さえ変わらねば全て同じこと。

此の塔に、力さえ集まればそれでよい」


そう、白皇は両手を広げて、朗らかな声を発した。


「ああ、ようやく力が満ちた。あの女に耐え忍んで仕えたあの苦痛が…報われる日がようやく来たのだ!!! 13年目にしてようやく願いが叶う!!!」



恐らく――


彼にとっては、俺達が白皇を出し抜こうと…その選択肢を1つずつ消していった処で、同じくらいの速さで別の選択肢を用意出来るのだろう。


それだけ狡猾だと言えばいいのか、それだけの執念だと言えばいいのか。



「ねえ、久遠は!!?」



芹霞の声。



「あたしとの賭けは、10個同時破壊。それは時間までに出来たでしょう!!?

だからあたしに久遠を返して」



"返して"


自分のものだと、そう主張する芹霞に、俺の心は軋んで。


かつてそう扱われた俺に、芹霞は見向きもしない。


忘却の彼方に俺はいるのか。


それとも、わざと忘却しようとしているのか。